
沖縄のソウルフードには様々なものがありますが、中でも沖縄てんぷらは誰もが認める沖縄のソウルフードです。本州のてんぷらと全く異なる沖縄てんぷら。実際にどんな秘密があるのか探ってみます。
目次
沖縄県民にとっててんぷらは「おやつ」
本州の人にとって天ぷらは、あくまでも和食料理というカテゴリーに入ります。サクサクとした衣と食材の素材の持ち味が楽しめる本州のてんぷらは、繊細な和食料理として海外の観光客からも人気があります。
ところが沖縄で「てんぷら」というと、子どもから大人まで大好きなおやつにすぎません。見た目も本州の天ぷらとは全く違い、ぽってりとした衣がなんともボリューミーです。
食べた時もサクッとした本州の天ぷらのような食感ではなく、もっちりとしているのが特徴です。それもそのはずで、沖縄の天ぷらは衣がとにかく分厚いのが特徴にあります。しかも衣そのものに味付けがされているため、なにも着けずにそのまま口の中へダイレクトに放り込むのが沖縄流です。
ちなみに沖縄でも本州のようなスタンダードの天ぷらもあります。でもその場合は間違えないように本州の天ぷらの方は「天ぷら」、沖縄の方は「沖縄てんぷら」または「てんぷら」と表示してあります。
沖縄てんぷらの衣は通常の焼く倍の卵を使っている
沖縄てんぷらの衣がどうしてもっちりとしたボリューム感があるかというと、そこには生地の作り方の違いがありました。
一般的な和食の天ぷらは、さっくりとした食感が楽しめるように極力薄く衣をつけて油で揚げます。ところが沖縄てんぷらの場合は、中身の食材よりも衣の方がメインにあるため具よりも衣の方が2倍以上の割合を占めていることもあります。
この分厚い衣を実現するための秘密が、卵の量にあります。一般的な和食の天ぷらと比べて5倍近い量の卵を投入します。でもこの大量の卵のおかげで、しっとりとした分厚い衣が出来上がります。
沖縄てんぷらの主要食材がなんとも素朴
沖縄てんぷらに使われる食材は、大きく分けると「サカナ」「イカ」「インゲン」「芋」になります。あえて「サカナ」としてあるのは、状況によって使う魚の種類が変わるからです。
沖縄てんぷらの基本は「その日安く手に入った食材を使う」がテーマですから、てんぷらに使う魚もいろいろな種類の魚を使います。一般的には白身の魚を使いますが、店の仕入れ状況によってはマグロが使われることもあります。
インゲンは「インゲンオンリー」と「インゲン&魚肉ソーセージ」の2種類ある
沖縄てんぷらの定番食材である「インゲン」は、店によって2種類に分かれます。最もスタンダードなのは、いんげんのサイズに合わせてカットした魚肉ソーセージを一緒に衣につけて揚げたものです。このタイプのインゲンてんぷらだと、野菜嫌いの子供でも平気でパクパク食べます。
これに対して「インゲンオンリー」の場合は、名前から見ればスタンダードに思えますが沖縄県民としては限りなくレアなインゲンてんぷらです。インゲン好きの人にはたまらないようですが、「インゲン&魚肉ソーセージ」を期待している人にとってはものすごく損をしたような気分になります。
モズクとアーサも沖縄てんぷらでは外せない
スタンダードなサカナやイカなどの場合は冷めてもおいしく食べられるのですが、沖縄の天然素材であるモズクとアーサは違います。どちらも旬になるとよく見かけるのですが、かき揚げ風に仕上げるためアツアツの時が一番おいしく食べられます。
ちなみに沖縄てんぷら屋で「やさい」と書かれた天ぷらがあった場合は、モズクやアーサと同じくかき揚げ風に仕上げているので注意が必要です。
昔は50円以下で食べられた沖縄てんぷら
小麦粉などの原材料の高騰によって今では1個60~80円が相場の沖縄てんぷらですが、かつては50円玉を持っていけば1~2個買えました。そのため街の小さな駄菓子屋に行くと、店主のオバー手作りの沖縄てんぷらが置かれていて誰でも気軽に食べられるおやつだったのです。
すっかり沖縄の観光客の間でも人気が広がってしまった沖縄てんぷら。でもその奥深さはハマってみた人でなければわかりません。もしもあなたの中でお気に入りの天ぷら屋が出来たのなら、それはもうすっかり島ナイチャー(沖縄に長く住んでいる本土出身の移住者)となった証拠です。